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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
七
「あッ、なるほどそうか」
平次にも事件の成行きが次第に呑込めます。利吉の手紙の宛名は、殺されたお京ではなくて、主人の娘お喜多だったのです。
「お嬢様、――私は処刑になっても本望ですが、――たった一と言、やさしい言葉をかけて下さい、――お嬢様、お願い」
「…………」
未練男の焼き付くような視線に追われて、お喜多はツイと身体を隠しました。バタバタと、縁側を遠ざかる跫音。
「お嬢様」
それを見る利吉の眼からは、ドッと涙が湧きました。ピシリと鳴る縄尻。
「野郎ッ、歩けッ」
下っ引のダミ声が威嚇的に響きます。
七
夕光りが明神様の森にすっかり落ちてしまった頃、下っ引の鋳掛勝が帰って来ました。
「親分、解りましたぜ」
「何が解ったんだ、勝」
「あの浪宅に集まるのは、八千五百石の旗本で、駒込に屋敷のある、永井和泉守様の縁故の者ばかりですぜ」
「しめたッ」
「永井和泉守様は二年前に亡くなり、跡取りの鉄三郎様が三年前から行方知れずで、今は和泉守様の遠い伯父平馬様というのが後見格で、主人同様に振舞っていますよ。平馬様の子の平太郎という方が跡目相続するそうで――」
「そいつは有難い、――ところで、皆川半之丞というのは、永井和泉守様の何だ」