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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

七

恐ろしい悪筆で、容易には読めませんが、大骨折で弁慶読みにすると、

〈坊っちゃんは無事だ、この上とも殺させたくなかったら、十両よこせ。金は裏口の右土台下の穴へ入れておくがよい、その上で折を見て子供は返す。誰にも言うな、言うと子供の命はないぞ〉

とこんな意味の事が書いてあるのです。

「金はどうしました」

「昨夜土台下へ入れておきましたが、今朝見ると、無くなっています」

「誰かに見張らせたんでしょうね」

「いえ、そんな事をすると、坊やの命が危ないと思って、――それにたった十両ですから」

「なるほど、心配は御尤もだが、惜しい事をしたものだ、――いや、たった十両欲しいと言ったのが面白いな、どうかすると、もう一度百両とか二百両とか吹っ掛けてきますよ」

「そうでしょうか」

「その時は御新造」

平次は何やらお君の耳に囁いて帰りました。

七

翌る日、銭形平次がガラッ八の前に硯箱を持って来させました。

「八、ちょいと字を書いてみる気はないか」

「からかっちゃいけません。親分、字を書かされるような悪事をした覚えはありませんよ」

八五郎はすっかりお冠を曲げます。

「まア、そう言うな、手紙一本書くだけだ。