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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
「へえ、あの女をですかい」
「海老責、算盤責、車責となると、女が美いから見物だろうよ」
「…………」
ガラッ八も黙ってしまいました。人一倍涙脆くて、思いやりのある平次が、ケロリとしてこんな事を言う心持が解らなかったのです。
「そんな事より、頼んだ事はどうだったい」
「それですよ親分、不思議なことがあるもので――」
ガラッ八は膝を乗出しました。
「小屋で殺された晩も、本人の又六は緑町の自分の家で、暁方まで鑿を使っていたって――近所の衆は言ったろう」
「えッ、どうしてそれを親分」
「そう来なくちゃ、テニヲハの合わないことがあるんだ」
「驚いたなア、どうも」
殺された本人が、自分の家で暁方まで働いていたというのは、一体どういう意味でしょう。
「八、少しばかり絵解きをしてやろうか」
「ヘエ――」
「勘兵衛が殺された晩、又六は内弟子を自分に仕立てて、仕事場へ置いたんだ。その細工が過ぎて自分が殺される晩も、替玉に仕事場でゴトゴトやらしたのさ。まさか、その晩、自分が殺されるとは思わなかったろう」
「ヘエ――、なある」
ガラッ八は一応感心しましたが、まだ、お倉を疑う気にはなれません。
が、事件は次第に緊張して、お倉牢問いの物凄い噂がどこからともなく、物好きな江戸っ子の耳に伝わりました。