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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
三
「二人ともいやにお上品で綺麗だという外にはね、――同じ武家でも、あんなのは、舞台へ出て来る武家のようじゃありませんか」
「それにしちゃ、手が荒れているとは思わなかったかい、八」
平次は大変なところへ眼をつけていたのです。
「貧乏な浪人暮しで、下女も飯炊きも置かなきゃ、娘の手も荒れるでしょうよ」
ガラッ八は少しばかりセンチメンタルになりました。
「娘はそれで解るとして、――あの主人の手はどうだ、ありゃ武家や町人の手じゃねえ、百姓か職人の手だ」
「…………」
「いろいろ面白いことがありそうだよ、少し当ってみよう、――ところで、稽古の始まるまでまだまる一日あるわけだから、その前にあの兄妹の素姓と、近所の噂を聞いておくとしよう。頼むぞ、八」
「ヘエ――」
八五郎は両手を揉みました。相手が綺麗なだけに、何か武者顫いみたいなものを感じます。
三
「親分、驚いたの何のって――」
八五郎はまたドブ板を跳ね返して、飛込みました。
「俺の方が驚くよ、そう毎度格子をはずされちゃ」
平次は相変らず落着いております。
「それどころじゃねえ、――今晩はどんな事があったと思いますッ」
「変な声を出すなよ、馬鹿だなア」