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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
四
それを読んだ平次は、煙管の吸口を額に当てたまま、思わず唸りました。懐紙に、消炭でのたくらせた走り書きは、
親分、大変なことになったぜ、明日はきっと、鬼の首を取って帰る、外まわりの土に気をつけて下さい――
間違いだらけの仮名文字、ガラッ八名代の悪筆に紛れもありません。
四
それっきりガラッ八は帰らなかったのです。皆川半之丞の浪宅へ、幾度か使いをやりましたが、二晩稽古に来たっきり、あとは顔を見せない――という素気ない挨拶です。
一方皆川半之丞のところに集まる四五人の弟子の身許を、一人一人虱潰しに調べさせた下っ引は、思いも寄らぬ不思議な事を聞込んで来ました。
黒門町から来るのは、小旗本某の用人、本郷三丁目から来るのは、以前旗本某に使われた小者、湯島から通う男は、旗本某の乳母だったという老女の倅。
「その旗本は何というんだ、愚図愚図しちゃいられない、大急ぎで訊いて来い」
平次は日頃にも似ぬあせりようです。下っ引を二三人、尻を蹴飛ばすように出してやった平次は、深々と腕を拱いて考え込みました。若くてイキのいい平次が、こんな分別顔をするのは滅多にないことですが、三日消息を絶ったガラッ八の身の上に、何か重大な危険が、襲いかかっているような気がして、さすがに不吉な予感に怯え続けていたのでした。