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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
「…………」
二人の浪人者も、事態の容易ならぬのに黙りこくってしまいました。
「左利きで、力の強い奉公人に違いありません、――あッ、あの野郎だッ」
寄って来た人垣を抜けてコソコソと逃げる若い男、平次はそれを見とがめて後ろから追いすがりました。
「親分、私は何にも知りませんよ、とんでもない」
そう言いながらも必死と反抗するのを、引っ倒してパッと叩き伏せ、繰り出す早縄が、蛇のように若い男の両手を後ろに縛り上げます。
「利吉、――とか言ったね、神妙にするがいい、裾に血が付いているじゃないか」
「えッ」
「ハッハッハッ、そう言われて、自分の裾を見るところが正直だ、――番頭さん、この男の荷物を見せて下さい」
「ヘエ――」
老番頭の太兵衛もどうすることも出来ません。不承不承下男に言い付けて、奉公人の部屋から、古い竹行李を一つ持って来させました。
縄付の手代利吉を、飛んで来た下っ引に預けた平次は、手早く行李を開けて、ザッと目を通しました。少し乱雑に入れたお仕着せに晴着、それに少しばかり臍くりの入った財布。その下には、
「おや?」
書き損じらしい手紙が七八本。いちいちくりひろげて見ると、たどたどしい言葉で、思いの丈をかき口説いた紋切型のものばかり、宛名はみんなお嬢様、――利吉より、となっております。