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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

銭形平次捕物控

一

一

「八、たいそう手前は粋になったな」

「からかっちゃいけません、親分」

八五郎のガラッ八は、あわてて、膝っ小僧を隠しました。柄にない狭い単衣、尻をまくるには便利ですが、真面目に坐り直すと、帆立て尻にならなければ、どう工面をしても膝っ小僧がハミ出します。

「隠すな、八、ネタはちゃんと挙がってるぜ」

銭形平次は構わずに続けました。

「へッ、へッ、どの口のネタで?」

「いやな野郎だな、顎なんか撫でて、――近頃手前、遠吠えの稽古をするってえ話じゃないか」

「遠吠えは情けねえ。誰がそんな事を親分に言い付けたんで」

ガラッ八は少しばかり意気込みました。

「手前の伯母さんだよ。――今朝お勝手口へ顔を出して、お静に愚痴を聞かせていたぜ――酒や女の道楽と違って、若い者の稽古所入りが悪いではありませんが、家へ帰って来て唸られると気が滅入ります。糠味噌は蓋に仔細はございませんが、あんな調子っ外れの遠吠えを聞かされたら、どんな気の強い娘も寄り付かないだろうと思うと、可哀想でなりません。御存じの通り、あれはまだ独り者ですから――だとさ。どうだい八、伯母さんは苦労人だろう。あんまり心配さしちゃならねえよ」