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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
大名の話から、お琴の噂まで出た後で、ガラッ八も最初は渋りましたが、向柳原の叔母の家に居ても、親分の平次の家に居ても、居候に変りはないのですから、結局晩酌と御馳走と、お琴の美しさを満喫するのが景物で、少しは良い心持にウカウカと二三日過してしまいました。
それは四日目の朝。
「八、両国まで一緒に来いッ」
「応ッ」
珍しく平次に誘われた八五郎は、少し極り悪く中江川の家から飛出し、平次を追って一気に両国まで。
「何かあったんで? 親分」
「広小路の酒屋へ入ったよ」
「ヘエ――」
「手口はいつもの通り、庇を渡って天窓から入り、手代が一人斬られて、盗られたのは百両ばかり」
そんな事を言ううちに、二人は野次馬に取囲まれた酒屋――桝屋伝七――の前に立っておりました。
「親分さん、大変なことになりました。この通り」
飛んで出たのは主人の伝七です。指さした方を見ると、庇に掛けた梯子、最初はそれを渡って楽々と天窓をコジあけ、隣の部屋に居た手代を虫のように殺して、次の間の用箪笥から百両余り入った主人の財布を盗って逃げた――と思われました。
しかし、不思議なことに、ここでも、梯子は庇に掛けたまま使った様子はありません。