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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
「銭形の、待ってくれ」
驚く三輪の万七、続いて立とうとするのを、
「三輪の親分さん、聞いて下さい――私はどうせ助かりそうもない、何もかもみんな申します。白旗直八を殺したのは、お駒じゃありません」
瀕死の左孝は、万七の袖を犇と掴んで、苦しい声を振り絞るのです。
「何だ、早く言え」
と中腰の万七。
「白旗直八を殺したのは、この左孝でございます。――お駒などが、とんでもない」
「何だと、いい加減の事を言うと承知しねえぞ」
「今死ぬ私が、いい加減な事を言うものですか、――何を隠しましょう、これはお駒も知らない事ですが、私はお駒のためには真の父親――」
「何?」
「お駒は私の娘でございます」
左孝の言うのは全く思いもよらぬ事ですが、その真実性は万七の腰を据えさせます。
苦しい息の下から話したのはこうでした。
左孝がまだ若くて名ある店の若旦那時代に、芸妓と馴染んで生れたのがお駒だったのです。その後しばらく他国を放浪し、落ちぶれ果てた姿で帰って来ると、お駒は他所に貰われて美しく育ち、その母親は十年も前に死んでおりました。
左孝は、お駒の夢を破らないために、永い間名乗りもせずに来ました。