Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

銭形平次捕物控

一

一

「親分はいらっしゃる?」

「まア、お品さん、しばらくねえ、さア、どうぞ――」

取次のお静は、手を取らぬばかりに、石原の利助の娘で、年増っぷりの美しいお品を招じ入れました。

「何? お品さん、それは珍しいねえ、近頃、兄哥はどうなすったんだ」

銭形の平次も、この珍客の声を聞いて、あわてて浴衣の肌を入れながら出て来ました。妙に蒸し暑い日、八朔はとうに過ぎましたが、江戸はなかなか涼風の立つ様子もありません。

「親分、しばらく、実は少し智恵を拝借したいことがあって伺ったんですが」

お品は座蒲団の横へ少し堅く坐りました。

まだ二十を越したばかりの、水の滴るような美しさですが、一度出戻りになってからは、すっかり諦め切った姿で、近頃はとかく勝れない親父の利助を援けながら、大勢の子分を指図してお上から預かった、十手取縄を恥しめないだけの事をしているお品だったのです。

「智恵や金はあるわけはねえが、お静、到来物の西瓜があったら、あいつは綺麗事じゃないが、喉の渇いた時はよかろう、お品さんに切って上げな」

「あれ、私はもう冷たい水で結構、お静さん構わないで下さい」

帷子の涼しい着こなし、炎天の昼下がりを、本所から神田までやって来て、大した汗もかかない人柄がなつかしまれます。