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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十三)青い帯
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens
駿河台を降りて、九段の方へ――狭い路地を抜けると、向うからスタスタとやって来る、一人の武家がありました。
覆面、黒装束、両刀を少し閂に、強いような、弱いような、得体の知れない手触りですが、北条左母次郎はもう、相手の見境もありませんでした。
「え――ッ」
摺れ違いざま、例の一刀両断と思う小手へ、どこから投ったか、発止と叩きつけた礫が一つ。
「あッ」
北条左母次郎思わず気合を挫かれて、折角の獲物を斬り損ねました。が、もとよりそんなことで諦める左母次郎ではありません。
摺れ違って、二三歩後ろの方へ、スタスタと行く相手へ、追い討ちに一と太刀、
「え――ッ」
存分に浴びせるはずの手は、思わず宙に釘付けになりました。何やら闇を縫って飛んで来た物が、したたかに、左母次郎の振りかぶった拳を打ったのです。
「御用ッ」
銭形平次です。曲者――北条左母次郎と、斬りかけられた武士との間に立って、高々と右手が挙がりました。得意の投げ銭が、二度まで、曲者の襲撃を妨げたのでした。
早くも形勢を察した左母次郎は、物をも言わず、猛然と平次に斬ってかかりました。
「御用ッ、神妙にせい」
十手は火花を吐きます。