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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
乾児らへ命令て、力柱の効能をある事ないこと云い触れさせ、それが当たって当座のうちは、腕力の欲しい若者達が少しの効験でも身に受けたいと、夜昼境内へやって来ては、力柱へ体を打ち付け帰宅る時には多少なりとも、賽銭を投げて行ったものだが、倦き易いのは凡夫の常、ものの半年と経たないうちに参詣人の数は減り、賽銭の額もずんと減ったが、それでもここから立ち退かないのは、諏訪明神のお力によって、自然と頭の下がるような立派な大盗に巡り合い、親分と頼みたい一心からじゃ。そうは思ってもこの頃のようにこう不景気ではやり切れぬ。筑紫権六乾干しになるわい。それでとうとうそれも諦め今夜を最後にここを立ち退き、明日は旅路に向かうつもりじゃ」
「ほほう、それでは、その方は、いつぞや京師を荒らし廻わった盗人の筑紫権六であったか!」
孕石の下の女の声はこの時忽ち凛々しくなった。
「何を※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
と権六の嗄れた声が大地の下から云い返した。
「権六汝に問うことがある!」
「汝などとは無礼千万! 問いたくば何んでも問うがよいわい」
「汝、京師を荒らした時、いつも汝の向こうに廻わり、仕事の邪魔をしたばかりか、せっかく掠めた汝の財宝を汝の手から奪い返し盗まれた人々に返し与えた、女来也と名乗った女賊の張本、汝覚えておろうがの?」