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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
弾正太夫も同じように胸に十字を切りながら慇懃に頭を下げたのである。
「老師のご苦心お察し申す。この様な不善を致すのも絶体絶命の場合なればこそ。充分老師もご存知の通り、神保帯刀の持ち山からは金石一つ出ぬと云いふらしたは味方の人心を動揺させぬ拙き我らが計略でその実金石の出ないのは我らが持ち山の天蓋山でござる。天蓋山から金石出ぬとあってはそれこそ二万人の大衆の住む葡萄大谷は半ば闇! これ以上恐ろしいことはございませぬ。がしかしそれも杞憂となった! 悉く老師のお蔭でござる。お礼申すぞオースチン老! さてそこで老師の作られた絵図面通り地の底を螺旋形に掘って参ったなら金石を得ること出来ましょうな? 必ず鉱脈はござろうな?」――改めて念を押すのであった。
と、オースチン師は立ち上がった。そして厳に冷やかに叫ぶがように云ったのである。
「あるいはあるかも知れませぬ! あるいはないかも知れませぬ! さよう、ないかも知れませぬ!」
「黙れ!」
と不意に、吼えるがように、弾正太夫は怒号したが、いつかその手は傍の大刀の柄に掛かっていた。
「おのれ、主君を嘲弄するか! いま一言申して見よ、一刀の下に切り斃してくりょう! ただしは深い意味あって今の雑言洩らしたか! 返答致せ! えい、売僧奴が!」