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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
その時、人の跫音がすぐに間近く聞こえて来た。
「ええ邪魔者がはいりおる!」お吉は劇しく舌打ちをしたが、今は猶予していられないので狙いも付けず翳していた鎌を、島君目掛けて振り込んだ。
と大鎌は肩を掠め島君の袖を切り裂いた。その呼吸に素早く乗り、前へ島君はヒラリと飛んだがとたんに何者にか衝突った。
「えい気を付けろ! 何奴じゃい!」
男の声がこう怒鳴った。それは紋十郎の声であった。
「南無三宝」と心の中で叫び、島君は身を反わせて遁がれようとしたが早くもその肩を掴まれた。
「や、島君だな! もう遁がさぬ。可愛さ余って憎さ百倍! 嬲り殺しにしてくりょう!」
ぐっと小脇に抱い込もうとするのをスルリと抜けた島君はバタバタと坂を上がって行く。
「おのれ逃げようとて逃がすものか」と紋十郎は追いかけたが、ひらりとその前に立ちふさがったのは彼の妹のお吉であった。
「お前は兄さん! 云うことがある!」と、袂を固く握りしめた。
「むうう、妹か」
「妾は沢山は云いますまい。さあ潔くこの鎌で、死、死んでくださりませ!」
「…………」
「だいそれたお前の悪企み! 人の噂で聞きました。年頃ご恩を蒙っているご主君様を裏切って、敵に内通なされるとは天魔鬼畜の振舞いでござんす! いいえ弁解は立ちませぬ! 妹の妾に逢うまいとして、今日までおおかた四十日というもの