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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
「いっそ断念して逃げようじゃないか」
「どうもそいつも残念だな」
「などと愚図愚図している中に酷い目に逢わされないものでもない」
「いやに怖気を振るい出したな」
「そう云うお前だって怖かろう」
「何んのこの俺がビクつくものか」
「おや大層お威張りだね」
「あたりめえよ、人丸左陣だ」
「天地人三才のその中でも、人が一番ビリッ尻じゃないか」
「なあにそいつを逆に読めば人が一番の頭にならあ」
「おや負け惜しみの強いことね」
「押しも強ければ腰も強い。とは云うものの地丸左陣は、俺にとっては確かに苦手だ」
「それじゃ尚の事逃げようじゃないか」
「そうさそれより仕方あるまい」
二人は窃かに決心し、それとなく逃げ道を探し出した。
裏山伝いに西南へ抜け、大島、安塚、三ノ郷、……ここまでうまく落ち延びさえすれば、大概大丈夫ということになった。
ある日朝から雪が降り、夜にはいると嵐さえ加わり、逃亡するには絶好という、物凄い荒模様となった。
「お銀。いよいよ逃げ出そうぜ」
「そうさ、今夜なんか持って来いだね」
二人は窃り囁き合い、裏口の雨戸をこじ開けた。二人ながら名誉の盗賊、こういう事はお手の物である。