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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
「そうか、なるほど、それはもっともだ。しかし俺は殺したくない。俺は彼奴を心の底から嚇して見ようと思っている。彼奴を勝手に逃げさせるのだ。そうして四擒四縦の手で彼奴の荒胆を折いてやるのだ。そうしたらいかに強情でも俺に従うに相違ない。そうしたら彼奴を軍師として、内訌多いと噂に聞く木曽義明を攻めようと思う。良将は容易に得難いものだ。殺すなどとはもっての外だ。……お前達はその意で、よく兵を練るがよい」
こうして十一月九日となった。
朝から雪が降り出して容易のことでは止みそうもない。
水晶山の人足達は、明日の脱出を夢見ながら、その準備にいそしんでいた。
一方、山寨では地丸の指図で、四擒四縦の陣備えが、もう完全に出来上がっていた。
その日の夕方、地丸左陣は、召使いの女に云い付けて、例の美しい小枝姫を、飯場から居間へ連れて来させた。
地丸ほどの豪の者も、恋には心猿を止どめ難く、今宵こそ慾望をとげようと、心を定めているのであった。
不意に呼ばれた小枝姫は、さぞ驚いているかと思うと一向そんな様子もない。
智恵と慈悲と清浄と、そして勇気の権化のような、美しく凛々しい小枝姫は、今宵も凛々しく美しく且つ無邪気に取り澄ましている。