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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
「里の女子をお渡しします」
「ご苦労でござった。受け取りました」
で、織子は帰って行った。
数人の武士が姫を守り、廊下を先へ歩いて行った。姫は心中面白くてならない。父の前へ出て行って被衣を取ったらどうだろう? 父は面目を失って、赤面するに相違ない。そうしてその後は悪いことは一切しないに相違ない。早く父の前へ出たいものだ。……などと心で考えていた。
その時廊下が一方へ曲った。そこには数人の武士がいたが、その一人がつと進むと、やにわに姫を抱きかかえ、手に持っていた布片を、被衣越しに鼻へあてた。
「無礼者! 何をする!」
こう姫が叫んだ時には、もう麻酔剤が利いていた。
「輿を輿を!」と一人が呼んだ。
華美を極わめた立派な輿が、数人によって舁ぎ出されすぐに姫の死んだような体は、被衣のまま中へ入れられた。
そこへノッソリ出て来たのが、老宰相の山津主であった。
「うむ、うまくいったそうな」
「うまくいきましてございます」
「大広間の方へ運ぶがいい」
「かしこまりましてございます」
で、輿は舁ぎ出された。
嫁迎え
この頃異様な行列が、黄泉の岩根から、繰り出された。
行列はあたかも長蛇のように、麒麟山上の麗人国を目掛け、両国をはっきり境いしている、険しい断崖をよじ上った。