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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
なかった。
ともあれ、こうして平和の木曽は、忽ちのうちに騒がしい、不安な天地に変わったのである。
洋々と流れる千曲川も、冬は氷にとざされて、その水色さえ黝黒く、岸の枯蘆もおおかたは折れて、風の強さが思われる。
その千曲川の堤の上に、七、八人の武士が焚火を囲み、人通りもない夕暮れを、声荒々しく語っている。稲荷山に近く、篠井にも近い、吹きっ曝らしの堤である。
「こう寒くては俺達の商売も、まず上がったりという訳だな」
伊賀袴を穿いた大髻の中年の一人がこう云うと、
「そう諦めたものでもない。案外こういうアレの日にいい椋鳥がかかるものだ」頬髯の黒い大男がニヤニヤ笑ってすぐ答えた。
するとその中での頭領らしい、猪の皮の胴服を一着なし、銅金造りの陣刀を帯びた、人品骨格卑しくない、四十前後の肥大漢が、カラカラと大きく笑いながら、
「たとえ寒かろうが寒くあるまいが、吾らの商売には変わりがない。獲物のあった日がよい天気で獲物のない日がシケなのじゃ」
「ところでこの頃はそのシケの日が長くつづくではござらぬか」
中での若い侍が愚痴を零ぼすようにこう云った。
「吾らばかりがシケではない。