Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens

Aozora Bunko

「へェ?」

八五郎は首を振り振り平次に従います。

「この板塀に、お前は不思議なものを見付けなかったか」

「へェ、何んにもありませんね、節穴は一つも無いし――血は飛沫いて居るが」

「その血の飛沫いているところだよ、――血は板塀に叩きつけたように、恐ろしい勢いで飛沫いて居る。丁度四尺ほどのところ、お房の背中あたりだ」

「?」

「その血飛沫の中に、塀の割け目を、裏から繕ったのがあるだろう、――同じような黒い板だが、その板だけは血の跡も無いのはどういうわけだ」

「成程ね」

ベットリ板塀を汚した血飛沫の中に、五分幅の二寸程の長さで、裏から貼った繕いの板だけが、少しも血を受けてないのは不思議です。

「その上、繕いの板は黒く塗ってあるが、それは油煙を酒で溶いたのではなくて、硯で磨った墨だ。――それもいいが、その繕いの板が、桐の薄板じゃないか、菓子箱か何んかだ」

「サァ、大変だ」

「裏へ行ってみよう」

この発見は、平次と八五郎を勢づけました。路地の外へ出て、隣の空地に入り、其処から板塀の裏を見ると、平次の鑑定に紛れもなく、板塀の穴を繕ったのは、桐の薄板に墨を塗ったもので、しかも留めた釘はほんの一時押えの間に合わせに過ぎず、手を掛けて引くと、何の抵抗もなくコトリと手前に落ちて来るのです。