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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens

Aozora Bunko

三

「――」

「お嬢さんを殺したのがお新でなく浪次で無いとすると、これはよっぽど考えなきゃなるまい」

「成程そう言ったものですかね、親分の腑に落ちないことが、どう間違ったってあっしの腑に落ちる筈は無い、それじゃ暫くドブ渫いでも何でもやって見るとしましょうか」

「それじゃ頼むぜ、八、明日の朝でも、又明神下へ来てくれ」

「もっとも、宮永町ならドブ渫いも楽しみですよ、良い年増と、優しい娘が、時々顔を見せてくれるから、こんな事なら二、三日は働き甲斐があるというもので」

八五郎は建物の袖から此方を見ている、お通の淋しい――が活々とした表情を読んで、相変らず太平楽を言うのです。

三

「ありましたよ、親分、藍染川の泥の中に突っ込んで、全く天眼通ですね」

八五郎が泥だらけになった、麻三つぐりの手頃な細引を持って来たのは翌る日の朝でした。

「矢張り頑丈な細引だね、こいつでお新を殺したに違いあるまい、――おや、細引の端が、切り落してあるようだが――」

「五寸か一尺切ったようですね、細引は泥へ突っ込んでありましたが、幸い切り口だけは綺麗で」

「鋏で切ったらしいな、小さい鋏で、三度にも四度にも」