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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens

Aozora Bunko

五

五

それから丸一日経ちました。

明神下の家で、腐り切っている平次のところへ、

「親分、お早よう」

八五郎が陽気さを撒き散らして飛込みました。相変らず、日本一の機嫌です。

「どうした、八、大層元気じゃないか」

「元気なわけで、親分に言いつけられた仕事が、とんとん拍子に運びましたよ」

「猿曳きが見付かったのか」

「見付かりましたよ、根津宮永町の、木賃宿、――名前だけは優しいが、恐ろしく汚い『梅の家』に泊っている、信吉という信州者で」

「猿の毛を比べて見たのか」

「まだ其処までは行きませんよ――うっかり正面から名乗って出て、逃げられでもすると大変だから、親分の知恵を借りてからにしようと思いましてね」

「どんな男だえ、その猿回しは?」

「三十前後の小意気な男で、信州者とは見られませんよ。お猿はお玉と言って、利巧な雌猿、芸はうまいそうで」

「――」

「それに、気に入ったことに」

「何が気に入ったんだ」

「信吉には、綺麗な妹がありますよ、お浜と言って十九だそうで、洗いざらしの、縞もあやしくなった木綿の袷、兄の世話をしながら、内職の玩具を拵えて居るが、これが大した代物だ」

「娘のこととなると、恐ろしく眼が早いんだな」