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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
四
「主人の後添と、主人の弟が仲が良きゃ、世間の評判になりますよ、口で何んと言ったって、腹の中は犬と猿じゃありませんか、それにあの辰之助というのは喰えそうも無い男で、人位は殺し兼ねませんよ」
八五郎は一かどの事を言うのです。
「ちょいと御免蒙ります」
話の中へ、ヌッと顔を出したのは、噂の辰之助自身、――以ての外の顔でした。
「あ、お前さんは辰之助」
八五郎は驚くまいことか。
「へ、辰之助でございますよ、主人依右衛門の弟の、今聴くともなしに耳に入りましたが、此私が姪のお照殺しの下手人だと仰しゃるんですかね、八五郎親分」
辰之助の頬には、恐ろしい激怒が、苦笑いになって痙攣するのです。
四
「八、ひどく萎気てるじゃないか」
帰る途々、そう言う平次自身も、ひどく憂鬱です。
「素人衆に、あんな具合ポンポン言われたのは初めてですよ」
「無理もないことだが、ありゃ江戸一番の正直者か、でなきゃ、恐ろしい喰わせ者さ」
「何んとか手軽に下手人を挙げる工夫はありませんか、このまま帰っちゃ、今晩は寝付かれませんよ」
「お前でもそんな事があるのかえ」
「何んと考えても癪ですね、十手捕縄の手前」
「あの細引の端っこでも見付かれば、何んとか手繰れるだろうが」