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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「あっしなんか、番毎間違って怒られましたよ。お萩のつもりで、お房の肩を叩いてたりして」
「もう一つ、お萩とお房は、どっちがせっかちだ」
「お房は気の短いのが自慢で――私は気が短いから――なんて口癖に言ってましたよ」
「気の長いお萩の方が、湯が早いのか」
「あの時は喧嘩した後で、腹立ち紛れに飛出したんでしょう。いつもは二人一緒に行っても、お房の方が先に帰って、四半刻も経ってから、ゆるゆるとお萩が帰りましたよ」
二人は路地の入口に立っていると、何んか買物でもあるらしく、若い祭がチョコチョコと小走りに出て来ました。
「あ、ちょいと、お前に訊きたいことがあるとさ、銭形の親分が――」
八五郎はそれを呼留めました。
「――」
黙って立って、脅えたような眼をしている祭。袷も帯も、例のお仕着せで何んの変化もありませんが、そう思って見るとこの十七の娘には、何処か品の良いところがあり、他の四人の茶汲みには無い、智的なものが閃くのです。
「広小路の店の方はどうしたんだ」
平次はつまらない事から訊ね始めました。
「この騒ぎですもの、二、三日は休みでしょう」
祭の黒い瞳には、何んの動揺もありません。