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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「それが不思議なんです。お内儀さんはああ言い切っているけれど主人は宵のうちに外へ出たように思いますが――」
「よしよしそれだけ聴けば沢山だ――そしてお房は、お六が言う通り亥刻時分に外へ出たと言うことだね」
「――」
「此間お前は八五郎に、お房とお萩は、彌八郎や七平を奪い合いはしない、もっと手近に、もっと良い男が居ると言ったそうだな」
「――」
「その良い男というのは誰だえ」
「――」
「主人の造酒助のことを、お前は言ってると思うが、どうだ」
「――」
「もういいよ。お半、お前は返事をし度くないだろうが、お前の眼は――それに相違ありません――と返事して居るよ。お房は昨夜も、路地の中に立って――あの板塀にもたれて、主人の造酒助が出て来るのを待っていたんだろう。造酒助はそれと逢引する積りで外へ出ると、肝心のお房は背中から刺されて死んで居た。造酒助は薄情者らしいから、肝を潰して家の中へ引返し、女房のお余野にそっと言ったかも知れない。お余野は何も彼も承知の上で、亭主の造酒助を庇い、二人は夕方から一と晩、二階から動かなかったと言って居る」
平次は独り言のように言うのです、自分の自信を確かめる積りでしょう。