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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「お滝さんだ、――お滝さんだ」
不意に、憑かれたもののように立上りましたが、何を思い出したか、元の縁台の上に崩折れて、深々とうな垂れたまま、シクシクと泣き出してしまったのです。
それは、長い長い沈黙でした。ザッと四半刻あまり。新吉の涙の納まるのを、辛抱強く待って居る平次も、とうとうしびれを切らして、
「サァ、お前は助かったのだ。女の子のように泣いている時ではあるまい」
そっと新吉の肩へ――波打つように揺れて居る肩へ手を掛けたのです。
「でも、私は、本当のことを言うと、伯父さんを殺そうとしたんです」
とうとう、新吉は白状してしまいました。
「それは、嘘じゃあるまいな、新吉」
平次はもう一度、引寄せるように、少年の肩へ手を置きました。
「嘘なんか言やしません。私は――あの馬鹿気た祝言の前に伯父さんを殺す気で、道具箱の中から、匕首を持ち出しました。すると、すると――」
「すると、どうした」
「あの火事騒ぎでした。――火事騒ぎが無ければ、私は伯父さんの部屋に忍んで行って一と思いに刺し殺した上、私も隅田川に飛込んで、死んでしまう積りでした」
「――」
「――匕首を持って、私は梯子段を昇ろうとしました。