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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
平次は一服吸いつけながら、彫み込むように、八五郎に話しかけるのです。
「例えば、何んです、親分」
「吹矢を射たのは、目黒の浪次の悪戯で、お通を二階から突き落したのは、下女のお新かも知れないが、お通の髪を切ったのと、お通が風呂に入ってるところを、上から蓋をして殺そうとしたのは、決して浪次やお新じゃないぜ」
平次は新しい局面を開いて見せるのでした。
「そんな事はないでしょう、親分」
「ところが、お新でないという証拠がうんとあるんだ。第一、お通を井戸端で抱きすくめて、髪を切った曲者は、女だとは言ったが、腋臭があるとは言わなかったぜ。梯子段の上から、突き落されてさえ、腋臭の匂った女が、人を懐深く抱きしめて、チョキチョキ髪を切って腋臭がわからないという筈はあるまい」
「――」
「風呂の蓋だってそうだ。華奢なようでも女が一人入って居る風呂へ、いきなり蓋をして殺そうというには、大変な力がいるわけじゃないか。風呂の中の人間は、手と足と腰と首で突っ張るだろう、それを押えつける力というものは容易のことではあるまい」
「成程ね」
八五郎はとうとう、平次の論理に承服しないわけには行きませんでした。