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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「お雪さんと言ったね」
「ハイ」
側に居るお雪――十九になるという、淋しく品の良い娘は、恐る恐る顔を挙げました。
「この手鞠は、お前が拵えたのか」
手鞠はかがり掛けで、綾になった飾り糸が半分ほど掛けてありますが、普通の娘達が趣味にもたしなみにも作る、五色の糸の美しく綾なすのと違って、かがり方は如何にも巧みですが、色糸は白と青と、そして黒だけ、はなはだ淋しくて変ったものでした。
「私は少しも知りません、何時の間に、私の手箱に入ったでしょう」
お雪は鞠を手に取って、眼を見張って居ります。現にお雪の手箱には、赤い糸も黄色い糸も、紫色の糸も豊富にあるのですから、この白と黒と青の三色のかがり糸は、処女の眼にも、銭形平次の眼にも異様に映ったのです。
「八、こいつをほぐしてみよう、糸を引っ張ってくれ」
「へッ、こいつは面白い」
八五郎はそれを遊びと心得て居りました。折角かがりかけた手鞠の色糸を、遠慮も会釈もなくほぐして行くと、中には幾重にも紙や綿が巻いてあり、最後に現われたのは何んと、一と握りほどの赤い麻糸のほぐしたものではありませんか。
「あ、こいつは細引の端を切ってほぐしたのだ」