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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
今のところ、先ず何んの変ったことも無く、黒旋風ともあろう者が、評判の物持ではあるにしても、言わば出来星の小商人を狙うのが、不思議にさえ思われるほどです。
「親分、私共へ泊って下さるでしょうな」
主人佐兵衛が嘆願しますが、
「いや、矢張り、私は外で見張るとしよう。幸い路地の外には、自身番もあることだし、其処で夜明しをする気なら」
平次は別に考えがある様子です。後で言ったことですが、――あの時は自惚が過ぎたよ、黒旋風は俺と一騎討の勝負をする気だったらしいが、俺の方は、いくら黒旋風でも、俺が泊って居ては押入る気にもなれまいと思ったので、自身番に立て籠る気になったが、惜しいことだった――と平次自身が述懐したのも無理のないことでした。
淡路屋は質屋の常識通り、路地の中の奥まったところにあり、その路地の入口から十間とも離れていないところに、自身番の小屋があったので、表を見張るにはまことに絶好の場所でした。
八五郎は淡路屋の裏、土蔵の陰の三尺の抜け裏の入口に頑張らせ、二人の下っ引は、引っ切りなしに、淡路屋の四方を見回らせることにしました。八五郎の陣を敷いた場所は、一寸手薄のようにも見えますが、土蔵の庇の下を潜って、裏通りへ抜ける狭い抜け裏で、入口と出口には厳重な木戸があり、一夫関を護ればと言った、江戸の下町によく見掛けた