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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「だから、俺が居ても無駄じゃないか」
下っ引が六人、八五郎に号令さして置けば、先ず間違いがあるまいと平次は言うのです。
「弱ったなァ」
だが、八五郎はこの大任を素直に引受けるほど自惚れては居ません。
「波岡采女様は、八百石のお旗本だ。泥棒に狙われたからと言って、町方の御用聞を邸内に引入れ、世間の物笑いになり度くないと仰しゃるのも無理はないが、コチとらは稼業でも、十二月十日の寒空に、門の外に突っ立って、一と晩まんじりともしないのは、あまり威張ったことじゃないよ――俺はもう疝気と喘息が起きそうでとても叶わないから、何が何んでも帰るよ」
平次がこういうのも一つの理由がありました。波岡采女甲府勤番仰せつけられ、暮の雑用として、公儀から金子二千両を預かり、それを馬に乗せて、明日は早朝出発という前の晩を、凶賊黒旋風に狙われたのです。
このあまり人に知られない日程を、どうして黒旋風が嗅ぎつけ、今夜といふ今夜を選んで、波岡采女邸を襲うと予告したか、それは平次にも大きい謎でした。
「親分、そう言わずに――」
「泣き言をいうなよ、八。ところで、宮永町は見張ってあるのか」
「湯島の吉が子分と一緒に、一と晩あの木賃宿に張り込んでいる筈ですよ」