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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
さすがに漁師の伊太郎は、河童説を信じてはいない様子です。
次に呼出されたのは幇間の理八、五十がらみのよく肥った男で、小唄を上手に歌うのと、軽口がうまいので人気のある男芸者です。
「これは銭形の親分さん」
ヒョイと下げた頭、あんまりよく禿げているので、前からでは髷も見えませんが、後ろには若干の毛があり、真新しい元結が、よく油で塗り固めた小指ほどの髷節を確と締めております。
「師匠はどこに居たんだ」
と平次。
「どうした事か、一刻ばかり前からひどく腹が痛くなって、我慢にも、外の風に吹かれちゃいられません。仕方がないから、おさの姐さんと一緒に、庵寺の隣の茶店の離れを借りて、休んでおりましたよ」
理八は額をツルリと撫で上げました。
「おさのも腹が痛かったのか」
「ヘエ――お店から持って来た、安倍川餅を二つ三つやると、半刻ばかり経って急に腹が痛み出しました。他の方は酒がいけるので、安倍川なんかに手は出しません。甘いのがいけるのは、私とおさの姐さんだけで」
「その安倍川餅の残りはどうした」
「竹の皮ごと川へ捨ててしまいましたよ」
「…………」
平次は舌打ちをしたい心持でした。