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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
七
間もなく平次はガラッ八と一緒に引揚げました。
「親分、あの甚三郎が怪しくはありませんか、喰えねえ男のようですが」
とガラッ八。
「いや、あれは身分違いに腹を立てているんだ。あの男の曲毬の腕は大したものだが、人間も聢りしているよ。中山半七郎とは大変な違いだ」
平次は相変らず深々と考え込んでおります。
「残るのはお神楽の清吉だ、行ってみましょうか、親分」
昌平橋近くへ来ると、八五郎はこんな事を言います。
「三輪の万七兄哥の家へか」
「ヘエ」
「馬鹿野郎、清吉は下っ引だが、万七兄哥の右の腕だ。まさか俺が出かけて、調べるわけにも行くめえ」
全く平次の言う通りです。お藤と何かの噂があったにしても、岡っ引仲間で、調べも訊きも出来るわけはなかったのです。
「だって、親分、この上怪しいのは、清吉だけじゃありませんか」
「何をつまらねえ」
二人はいつの間にやら平次の家へ帰っておりました。
七
偽平次の強盗には、左の頬に赤い痣がある――ということは、その日のうちに江戸中に知れ渡りました。
お蔭で平次の疑いは晴れましたが、その代り左の頬に痣のある男は、年寄りも若いのも、金持も貧乏人も、橋の袂に居る乞食までが、一と通り疑われたり、調べられたりしました。