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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
五
「親分、有難い、明りが立ったッ」
ガラッ八は思わず飛上がりました。真物の銭形平次の頬には、左にも右にも、鵜の毛ほどの汚点もありません。
「大丈夫間違いはあるまいな」
と平次。
「お勝手から射す灯でよく見えたんですもの、間違いなんかありません。それを見られたのが口惜しくて、こんな目に逢わせたんですもの。裏口へ人の跫音が聞えなかったら、私は殺されたかも判りませんよ」
お滝は思いの外聢りした娘でした。
「お前はいつ頃からここへ奉公しているんだ」
と平次。
「半年になります」
お滝の思わぬ手柄を聞いて、平次は妙に沈んでしまいます。
「親分、いい塩梅じゃありませんか」
ガラッ八はまたそれが不足でならなかったのです。
五
離れの隠居部屋に居る父親の専左衛門は、六十を越した老人で、何を聞いても応答の出来ないほど老耄しておりました。それに、悪い病気で身体も動かず、毛も抜け、顔も半分崩れて、見る影もありません。
この年寄りの浅ましい姿を見せるのは、倅の専助にはかなりの苦痛だったらしく、平次と八五郎が母屋へ引揚げたときはホッとした様子で――それでも引返して、蒲団を直したり、用事を訊ねたり、何かと親切にしている様子でした。