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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
六
「邪魔立てすな」
「いえ、父上様、浪江殿が可哀相でございます」
「退け退け」
「打つならどうぞ、私を打って下さい」
水と鞭とに打ち挫かれた半裸体の娘を、好ましそうに覗きながら、父の鞭から庇って、文五郎はとにかく声を絞りました。
「えッ、聞きわけのない」
「あッ、父上様」
六
「親分、このまま黙って帰るんですか」
「そうだよ」
「あの父子に馬鹿な芝居を見せられて、指を銜えて引下がるんですかえ」
「いやに、絡んだ言い方だな、八」
「なに、そういう訳じゃありませんが、あんまり業腹だから、親分が黙って見ていて下さりゃ、あっしが飛出して、あの二人を退治した上、娘を引っ担いで逃げ出しますよ」
「馬鹿、あれは旗本の屋敷内に起った内緒事だ。町方の御用聞が、そんなお節介をしたら、ただじゃ済むめえ」
「だって、親分」
「それが、平次のしたことと判ってみねえ、入智恵をした与力の笹野様をはじめ延いては御奉行朝倉様の御迷惑になるだろう」
「…………」
「それとも、旗本の屋敷へ、物盗りのように忍び込んで、娘を誘拐した罪を、手前一人で背負って立つか――」
「そんな事は、親分」
「まア、いい、時節を待て」
平次とガラッ八は、こう言いながら、表町の通りを歩いておりました。