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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
六
が、しばらくしてまた戻って来ました。
「皆んな帰りませんよ、――河童が下手人だというわけを聞かなきゃ、安心して帰って寝られないと言うんで」
「なるほどな、――好ましい事じゃないが、それでは河童の正体を教えてやろう。皆んな庵寺へ集めておくがいい」
「ヘエ――」
ガラッ八は有頂天の様子で戻ります。
六
「まず、第一に」
平次は四方を見廻しました。狭い庵室の二た間を打っこ抜いて、十三四人は入ったでしょう。疑われたのも、疑われないのも、好奇心にすっかり夢中ですが、たった一人、庵主の若い尼良海だけは仏壇の前に端坐して、何やら口の中で誦し続けております。
「第一に、伊勢屋新六を良く思っている人間は、この中に一人もいないのが不思議だ」
そういえば、船頭も漁師も、幇間も番頭も、腹の中では新六を怨むかさげすむか、とにかく良くは思っていない様子です。
「それから、疑ってみると、不思議なことに潔白な人間は一人もいない――」
平次は皆んなのけげんな顔を見ながら続けました。
「理八とおさのは、腹が痛くて茶店の離室へ行ったと言うがあれは大嘘だ」
「親分さん」
理八は乗出しましたが、平次はそれに構わず続けました。