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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
五
平次は飛出しました。その頃の国府を燻らすのは、今(昭和十一年当時)の金口や葉巻にも匹敵する贅で、もぐりの香具師の好みにしては、少し変でないことはありません。
五
「御用ッ」
八五郎はいきなり河童の見世物へ飛込みました。何かよくない尻があったものと見えて、昼にも間があるのに幕張りの粗末な小屋を畳みかけていたのです。
「何をしやがる。安岡っ引に御用呼ばわりなどをされる覚えはねえ、側へ寄ると河童をけしかけるぞ」
「神妙にせい」
「糞でも喰らえッ」
二匹の犬のように、猛然と噛み合う二人、後ろからは女房がガラッ八の髷節へ、必死とブラ下がってしまいました。
「あッ、痛えッ、放せッ」
「何をッ」
滅茶滅茶な騒ぎです。一と足遅れて駆け付けた平次は、漸くこの噛み合いを分けて、男女二人をキリキリと縛り上げました。
「歩けッ」
場所は両国、盛りこぼれるような野次馬の中を、縄付きを引いて行く照臭さ、あまり人を縛ったことのない平次は、ガラッ八の英雄的な得意さに任せて、一と足先に番所へ辿り着きます。
「お、銭形の、今日はお手並拝見に出て来たよ」
「お、三輪の兄哥」
銭形平次の顔は少し曇りました。