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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、良庵さんが来ましたぜ」
「ヘエ――、朝から変った人が来るものだね、丁寧に通すがいい」
銭形の平次は居ずまいを直して、客を迎えました。服部良庵という町内の本道(内科医)、頭を円めた五十年輩、黄八丈に縮緬の羽織といった、型のごとき風体です。
「親分、早速だが、大徳屋孫右衛門が死んだことはお聞きだろうね」
良庵はろくに挨拶もせずに、キナ臭そうな顔をするのでした。
「聞きましたよ。それがどうかしましたかえ?」
「どうもしないから不思議なんで」
「ヘエ――」
「大徳屋さんは丈夫な人だから、私を招んで身体を診せるのは、せいぜい三年に一度、五年に一度ぐらいのものだが、お酒の席や往来では、月に二三度ずつは逢っている。現に昨日も昌平橋ですれ違って、機嫌の好い挨拶を聞いて別れたばかり、まさか、あれほどの元気者が、一と晩のうちに冷たくなろうとは思わなかった」
「すると?」
平次は膝を進めました。
「早合点をしちゃいけない。ね、親分、私は今死骸を診て来たばかりなんだが、変死でないことだけは確かで」
「…………」
「殺されたわけでも、自害したわけでもなく、卒中でポックリ逝ったに違いないが、どうも、私には腑に落ちないことがあるんでネ。