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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

八

平次は老船頭の饒舌をいい加減に聞いて、船から飛降りると、一散に本銀町へ駆けて行きました。

八

本銀町の一角、一町四方もあろうと思う巴屋の店の後ろに、もう一町四方ほどの高い塀をめぐらして、巴屋の豪勢な住居があります。その高い塀の下に、押し潰されそうになりながら、頑張っている早桶屋――巴屋が金に飽かして地所ごと買い取ろうとするのを、頑固にハネ飛ばして、三方塀に囲まれながら、ダニのように喰い下がっているのが、名代の片意地者甚三郎だったのです。

平次とガラッ八が、桶屋の店先に立つと、

「そこに立っちゃ暗いよ」

大肌脱いで桶の仕上げをしながら、上眼使いにジロリと見たのが、例の名物男の甚三郎です。

年の頃は四十前後、左の頬にかなり古い傷痕はありますが、これが南辻橋の袂に立っていた、小意気な遊び人とはどうしても思えません。

「親方、精が出るね」

「早桶の註文かい」

どうも少し食い付きよくありません。

「お前さん昨夜どこへ行きなすったえ」

「何?」

「お品さんをどこへ隠したんだ、それを教えて貰おうか、次第によっちゃお前を入れる早桶を註文するよ」

「何だと、手前は一体誰だ」

「神田の平次だよ」