Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
三
「手前も聴いたのか」
「昨夜聴きましたよ、かれこれ亥刻(十時)過ぎでしたが、町内の物好きな人たちと一緒に、路地を入って、小永井屋敷の塀の外に居ると、泣くような怨むような、何とも言えない女の悲鳴が――」
「身振りまでしなくたっていい」
「朧月で、生暖かい晩、あんな声を聞かされちゃ全くたまりません」
「声の元を突き止めたかい、潜り込むとか何とかして――」
「そんなわけには行きゃしませんや、相手は旗本屋敷で、下手に潜り込んで見付かると、無礼者ッと来る」
「お化けに手討にされるのが怖かったんだろう」
「へッ、冗談でしょう」
ガラッ八をからかいながらも、平次は深々と腕を拱きました。この間から集めた、いろいろな情報を頭の中に纏めてみると、何かしらそこに、捨て置き難い重大性が匂います。
「ガラッ八、今晩一つ付き合わないか」
「ヘエ、どこへ」
「馬鹿だなア、飲む話じゃねえ、化物退治だよ」
「ヘエ」
三
その晩、四谷北町の小永井家の塀の外へ行った、平次とガラッ八は、わざと町内の人目を避けて、八軒町の方から、行止りの袋路地を、屋敷の横手へ廻ってみました。
草も林も茂り合った、千坪に近い屋敷で、ここまでは手が廻らなかったか、塀も築地も崩れて、野良犬の真似をすれば人間が潜り込めないこともありません。