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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
次の駄菓子屋は留守。――
最後に石原新町の鋳掛屋へ行ってみると、
「銭形の親分さんで。お願いでございます、娘を探し出して下さい。悪者は二階から押し込んで来やがって、娘をさらって行ってしまいましたよ、――男があるだろうっておっしゃるんですか、ジョ、冗談じゃありません、俺の娘と来た日にゃ町内でも評判の孝行者で――」
親父はおろおろしながらも、職人らしい威勢のいい事を言っております。
「親分、怪物は隣の天水桶を踏台にして、庇を渡って二階へ押し込んだんだね」
とガラッ八、天水桶の埃の上に印された足跡のようなものや、板庇に残る、破損の跡などを念入りに調べております。
「庇を渡ったのはよく解るが、外から雨戸を開けて入ったのは、どんな手品を使ったんだ」
と平次。
「すると――?」
「娘のおらくさんが自分で雨戸を開けて二階から出たんだよ」
「そんな事があるものですか親分、家の娘に限って――」
鋳掛屋の親父はやっきとなりますが、平次は一向気にも留めない様子で、家の造り、雨戸の具合などを念入りに見た上、大渋りの親父を説き落して、娘の持物から、貧しい着物まで一と通り眼を通しました。