Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
「これは大変だ、――口で言うと何でもないが、十何ヶ町を歩いて、これだけ書き上げるのは容易でない」
平次はバラバラとくりひろげて、ザッと眼を通しましたが、何に驚いたか、重ねて、
「お品さん、不思議なことがあるが、気が付きなすったか」
こう言いながら、膝の上の帳面を叩きます。
「施行のことでしょう」
お品の賢い眼はまたたきます。
「それだよ、お品さん、人さらいのあった町は、みんな本銀町の巴屋三右衛門が、施米をした町ばかりだ」
平次は大変なことに気が付きました。
巴屋というのはその頃、越後屋と対抗した江戸一流の呉服屋で、呉服の外に、大伝馬町、金吹町などに唐物屋、米屋、金物屋などの店を持ち、今の百貨店を幾つにも割ったような豪勢な商売をしている店でした。
主人の三右衛門は、やがて五十にも近い年配ですが、商売熱心な上に、世にも有難い心掛けの男で年中善根を施すのを楽しみにしている人間だったのです。
もっとも、長者番付の三役所で、金に不自由のないせいもあったでしょう。諸方の寄付寄進はもとより、付合の費用にも糸目をつけず、その上昨年の夏頃から、浅草、本所、深川を中心に、毎月八の日を決めて、一ヶ月一ヶ町の施米をはじめ、町役人の肝煎で、その町内の者でさえあれば、一人三升ずつの米を施していたのです。