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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
「親分、恐れ入った」
ガラッ八はこの素晴らしい親分の前に、心からなるお辞儀を一つ、ピョコリとやったものです。
「馬鹿野郎、往来で人の尻へお辞儀なんかしやがって、人様が見て笑ってるじゃないか」
「ところで親分、これからどうしたものでしょう」
「俺にも見当が付かない」
二人は間もなく鎧の渡に立っておりました。
「向うへ渡るんですか」
と船頭。
「向うへ渡ってもいいが、今朝イの一番にここを渡ったのはどんな人間だい」
平次はさり気ない調子で訊ねます。
「朝河岸へ行く肴屋でしたよ」
「それから」
「青物市場へ行く人と、茅場町の薬師様へのお詣りの人と、それから――」
「巴屋の番頭か手代は渡らなかったかい」
「知りませんね」
平次の身分を覚ったものか、面倒臭い問にも思いの外丁寧に答えてくれます。
「頬に傷のある遊び人風の男は?」
「そんな人は渡りませんよ」
平次はフト、南辻橋の施米の時、橋の袂で何やら合図をしていた男の事を思い出したのです。あの時はお品の変装に気を取られて、惜しい生き証拠を逃がしましたが、お品をさらった時一と役勤めたくらいですから、昨夜の一件にも、関係していないはずはないと思い当ったのです。