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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

元は武家出というだけに、こんな装が身に付いて、額の古瘡も何となく凄味があります。

「今日は特別な見世物を御覧に入れる。一度あって二度とない見物、こんな日に入り当てたお客様は仕合せだ、サア、いいか」

口上とも独り言ともつかぬ事を言って、サッと左の手を挙げると、

井戸の中からキリキリとせり上げられたのは一人の女。

それが何と、髪振り乱して、鼠色の着付を引摺った幽霊でもあることか、水々しい島田髷に、薄化粧までした、十七八の美しい娘。しかも水色の単衣に赤い帯まで締めて、その上を荒縄でキリキリと縛り上げられているのです。

娘は井戸の上へ、釣瓶のように引上げられて、ちょうど権三の眼の前、井桁の上に横たえられました。

「ね、お客様方、仔細あって、私はこの娘を殺さにゃならねえ――とまあ考えておくんなさい。刀には種も仕掛もねえ、井戸の上で肴のようにこの娘を切りさいなむんだ。こいつはお客様方の前だが、全く面白い見世物だぜ。一度あって二度ねえとは、この事だ」

権三の言葉には、恐ろしい真実性が籠って、グイグイと人の心に食い入りますが、まさか本当とは思わない客は、腹の底から脅かされながらも、固唾を呑んで、口をきく者もありません。