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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「親分さん、これが水の中にありました」

水から這い上がったばかりの、船頭文次の手の上には、金鱗燦とした一尺ばかりの鋳物の鯉が載っているのです。

「…………」

平次は黙って受取りました。音や看貫や、作の具合を見ると、銅に金鍍金をしたものらしく、安置物によくある品ですが、水に入ったのは昨今の様子で、大した変色もせず、錆上がってはいません。

作は拙劣で、まず田舎の床の間でなければ通用しないものでしょう。引くり返して裏を見ると、それでも、勢州住人治郎兵衛作と銘が入っております。

「…………」

平次は次第に物事が判って来るような気がしますか、謎の性質が深いせいか、まだ核心には触れそうもありません。

「何刻だろうな、八」

いきなり妙な事を聞く平次です。

「子刻(十二時)でしょうよ」

「泊めたら心配するだろう。皆んな帰してくれ」

「ヘエ――」

「庵寺に留め置いた六人と、船頭を入れて七人、皆んな帰してくれ。女どもは道が淋しかろう。乗物の世話をしてやるがいい」

「そんな事をして構いませんか、親分」

「下手人はやはり河童だよ」

「ヘエ――?」

ガラッ八は何が何やら解らずに、庵室へ引返しました。