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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「父親の専左衛門は、轟の権三の成れの果さ。俺に捕まったのが破滅で、一度は獄門台に上ろうとしたのを怨みに思い、倅の専助を仕込んで、あんな芝居を打ったんだよ」

「専助は親分に少しも似ないが」

「それが術だ、平常少しも似ない専助が、身扮から声まで俺に似るのは、修業のせいもあるが、専助は親父の小屋で、物真似をして客を呼んでいたことがあるんだよ」

「なア――る」

「投げ銭もあれだけ器用になるには、骨を折って稽古した事だろう。お藤などにかかり合いが出来なきゃア、いつまでも銭形の平次が強盗すると世間に思わせたかも知れない。危ない事だ。もう少しで俺も破滅だったよ」

「…………」

「お藤に迷って、金の力で婿になる話を進めたのはよかったが、どたん場になってお藤が頭をふるので、お藤と噂のあった人間を怨んだ。惣吉はそれで左眼をやられたのさ」

「お藤をさらったわけは」

「あれは変った娘だ。役者の舞台姿に迷ったり、曲毬の軽業師や、岡っ引の清吉に打ち込むといった気性だから、堅気の商人が嫌いだったのさ。専助にさらわれて、妙に専助が頼もしくなったんだね、――隣の按摩のところに匿されて十日もじっとしていたのは、専助が怖いせいもあったが、一つは、専助を見直す心持になったんだろう」