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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「八、逃がすな」

「何の」

「俺は眷属を捕まえて来る」

平次は引返して奥へ、その辺にうろうろする女中、美しく冷たいのを見付けると、有無を言わさず縄を打って、元の縁側へ引返しました。

「親分、こいつは人違いじゃありませんか」

「何?」

「此家の御新造――お紋さんですぜ」

「あッ、逃がしちゃならねえ」

ガラッ八の手が緩むと曲者はサッと抜け出すのを、追いすがって平次。

「卑怯だぞ民五郎、――俺は滅多に人を縛らねえが、手前のような悪党は勘弁しておけねえ」

ピシリと肩を打つと、お紋はそのまま根芝の上に崩折れてしまいました。

*

翌る日――。

「親分、お紋が幻の民五郎だったんですかえ。俺にはどうも解らねえ、絵解きをしておくんなさい」

八五郎は日向ぼっこをしながらこんな事を言います。

「その通りさ、あの女は生れ付きの悪党だ。身軽で無慈悲で、人を殺すことを何とも思わないが、自分の子だけは可愛かったんだ」

「ヘエ――」

「あの子だって荻野左仲様の子かどうか解ったものじゃねえ。高木銀次郎というのは解った人で、お紋の素姓を怪しいと睨んで、義兄に勧めて遠ざけたんだ。お紋はそれを根に持って高木銀次郎を縛らせ、自分が荻野家へ還る筋書を作ったのさ」