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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「お品さんが――首へ縄を付けて――とは言うまい」

「それは物の譬で」

「つまらねえ作なんか抜きにして――それっきりか」

と平次。

「それっきりだが、石原の利助兄哥は中気で、動きが取れねえ。お品さん一人で気を揉んでいるが、札差の伊勢屋新六が殺されたとあっちゃ、八丁堀の旦那衆も放っておきなさるめえ。行ってやって下さいよ、親分」

ガラッ八の八五郎は、思いの外の親切者でした。利助の娘のお品が、女だてらに、親父の縄張を守っている苦心を思うと、本当に平次の首根っこへ、縄を付けても引張り出したい心持でしょう。

平次は黙って考え込みました。ガラッ八に口説かれるまでもなく、お品を助けてやるに異論はありませんが、今から竪川の現場へ行ったのでは、どんなに急いでも亥刻(十時)近くなるでしょう。その前に何かする事はないものか、そんな事を思い廻らしているのでした。

「八」

「ヘエ――」

「手前、足は早いな」

「馬ほどじゃありませんが、人間並みには駆けますよ」

「竪川の材木置場まで、四半刻(三十分)ではどうだ」

「四つん這いになって行くんですかい、親分」

「馬鹿なことを言やがれ」

「四半刻ありゃ、亀戸の天神様へ行って有難いお札を頂いて帰って来ますよ」