Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

その中から、勘次は飛出して来て、平次に救いを求めたのでした。

平次とガラッ八が大徳屋へ行った時は、さすがに一通り騒ぎは落着いておりましたが、それでも、町内の衆は半分ほど逃げ帰り、家の者は、遺産争いとはまた別の心持で睨み合っておりました。

「あ、親分、ちょうどいいところへ」

一番先に冷静を取戻したのは、さすがに浪人崩れの草間六弥です。

「大変な事があったんですってね、まず仏様を見せて貰いましょうか」

眼ばかり光らせている男女を尻目に、平次とガラッ八はいきなり仏間に通りました。型のごとき逆さ屏風、香華、それに思いの外貧弱な供物の中に、なんの異状もなく据えられた棺へ、平次の手は掛ります。

蓋を開けると、

「あッ」

ゾロゾロと踉いて来た人達は、思わず声を立てたのも無理はありません。

棺の中は空っぽ――と思いきや、昨夜卒中で死んだ主人の孫右衛門が、白い経帷子を着たまま、入棺した時と少しの変りもなく、差し寄せた灯の中に寂然として死顔を俯向けているのです。

平次はそれを確かめると、横手の襖を開けました。

「フーム」

そこは血の海、匕首に縫われてもう一人の孫右衛門の死骸は、手を触れる者もなく横たわっております。