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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「…………」

大方は察したことですが、それでも草間六弥の細かい説明を聞くと、平次も笑えない気持になります。

「涙を流して口惜しがる主人を押えて、ともかくも今晩だけは無事に過させようとすると、やはり気になると見えて、納戸から飛出し、仏間の裏からお通夜の様子を覗いていたのだろう、――そこを誰かが見付けて、後ろからズブリとやった。――これだけの話だ。本当に死んでしまっちゃ、孫右衛門殿も気の毒だ」

草間六弥は何もかも言ってしまって、ホッとした様子で顔を挙げました。

「で、下手人の心当りは? 草間さん」

「それは判らない」

「それでは、主人が生きていちゃ困るのは誰で?」

「皆んなだよ、千代次郎も、才吉も、お柳も、お辰も、お村も、お隣の安兵衛も」

「草間さんは?」

「私と勘次だけは、主人が生きていてくれた方がよい、主人が死ねば、番頭と仲の悪い勘次は明日にも追出されるかも知れず、――居候の俺は、自分から遠慮して身を引かなきゃなるまい」

「形見分けの指図書のようなものはあるでしょうか」

「あるはずだ、才吉が預かっているだろう。身上は千代次郎のもの、三人の女どもには千両ずつ、才吉は三百両、あとの奉公人は五両三両ずつ貰うはずだ」