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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

平次の声には涙がありました。

「親分、あっしじゃありませんぜ」

「何?」

勘次は少年らしく引締まった顔を挙げました。

「あっしは旦那が生きていると聞いて、一と思いに殺すつもりで、刃物まで用意しました――でも、悲鳴を聞いてあっしが駆け付けた時は、旦那はもう殺されていたんです」

「何だって主殺しなんか考えたんだ」

「お辰さんが可哀相です。あの人は親孝行で、町内の評判者ですよ。旦那がお金を積んで買って来たのを私はよく知っています――同じ市ヶ谷で生れたんですもの。お辰さんは毎日泣いていましたよ」

「お前とお辰は幼馴染というわけだな」

ガラッ八も妙に和やかな口を挟みました。

「それで主人を殺す気になったとは、一応尤ものようだが、よくない心掛けだぞ」

平次は苦い顔を見せます。

「ヘエ――、でも本当に殺さなかったんです」

「証拠はあるのかい」

「この匕首を見て下さい。――宵のうちに奥から持出したんです。血なんか付いちゃいません――これを持って飛込むと、もう旦那は殺されていたんです」

懐から出した小刀ほどの小さい匕首、抜いてみると、なるほど血も何にも付いてはいません。

「こんなものを、何だって捨てずに持っていたんだ」