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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「…………」

「滅多な事で様子や顔色を変えない女、――相手が幽霊になっても死骸になっても、刺し殺し兼ねない怨みを持った女もある事を忘れていたのだよ」

「…………」

平次は八五郎を説き伏せるというよりは、自分自身を説き伏せるように言い切りました。自分で組み上げた間違いの構図を叩き壊して、新しい本当の構図を築き上げるためには、こうでもするより外はなかったのでしょう。

「今度は間違いはないぞ。来い、八」

*

お村は朝の化粧に余念もないところを縛られました。次第に衰えて行く容色のために、主人孫右衛門の愛を喪ったお村は、孫右衛門の生きてるのを発見すると、最後の運命を匕首一振に賭けて、一千両の形見分けを狙ったのですが、御家人崩れの男の許へ走る前に、平次の慧眼に見破られてしまったのです。

「親分、変な捕物だね」

帰る朝の街で、八五郎は話しかけました。

「捕物はつまらねえが、自分の死んだ後の人気を見ようとした、孫右衛門の心持の方がよっぽど面白かったよ」

「そこへ行くと、こちとらは金で買った人気じゃねえから有難いね。死ぬと本当に泣いてくれるのが二三人はあるぜ」

ガラッ八の顎の長さ。